義歯に名前を入れる。 歯科医師 木村達哉(1998年10月)
 特別擁護老人ホームではいろいろな理由で入居者の義歯が紛失する。また義歯の所有者がわからなくなることもある。そこでレジン床にその所有者の名前を埋め込むことにした。比較的簡単に美しく仕上がったのでその方法を紹介する。



ネームライターで作った名前テープの印字面を透明テープでコーテングしたものを重合時にレジン床部分に埋め込む方法を試みた。写真は試作品です。


この人は特別擁護老人ホームの入居者です。とても静かな方です。義歯を使用しています。介助なしで自力で食事ができますが、しかし自力で義歯を脱着することはできない。


ネームライターで透明テープに名前を印刷する。複雑な形態の床に完全に埋め込みさらに介護者に判読しやすい大きさを考慮すると右の写真の様になった。

このテープそのままではインクが溶け出してしまいます。そこで印字面を透明テープで印字面を覆います。制作した名前テープを作業模型と伴にラボに送ります。

これらのテープは医療用として開発されていない。よってテープを床レジンの深い部分に埋め込みは研磨仕上げなどにより床表面に露出しないように注意する。
仕上がったレジン床{上顎}。テープの埋め込みが少し深すぎたので判読し難い。ラボではハセツし難い部位を選んでこの位置にしたという。上顎は粘膜面から読むようにした方がよいかもしれない。


仕上がった下顎義歯。 この位置が無難です。下顎は外面から読むように埋め込んだ方がいいでしょう。



新しい義歯が入った。老人ホームでの義歯の清掃は大変である。自力で出来る人にはリハビリもかねて自身でするように指導したい。
 手が不自由などの理由で義歯の脱着ができない方は義歯の清掃や管理を介護者にゆだねることになる。老人ホームなどにおいては介護の方が口腔内と義歯の形態をみくらべて義歯の所有者を特定できないことがあります。それは義歯紛失の原因のひとつであるらしい。

 私は老人ホーム等の施設では義歯に所有者の名前が入っていると介護者による義歯の清掃や管理が省力化できるのではないかと考えています。
1998年10月。あるテレビ番組で、実際に義歯に名前を入れて義歯の清掃や管理を省力化している老人ホームが紹介されました。


協力

「デンタルラボ野村」
茨城県坂東市生子1796
tel 0280-88-0531

「デンタルラボ野村」所長 野村康雄 氏と打ち合せ。
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